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胎内被爆者が手記集 連絡会、2冊目発行 全国の42人 思い託す

 母親のおなかの中で原爆に遭った被爆者の体験手記集「生まれた時から被爆者―胎内被爆者の想(おも)い、次世代に託すもの」が完成した。発行した「胎内被爆者の会」(原爆胎内被爆者全国連絡会、82人)が15日、広島市中区で記者会見した。(山本祐司)

 会の結成翌年の2015年に18人分を収録したのに続き、2冊目。15都府県の42人が寄せた。胎内被爆し、原爆小頭症になった5人の歩みについて親や支援者がつづった手記も盛り込んだ。表紙と挿絵は小頭症被爆者の川下ヒロエさん(74)=東区=が描いた。

 会見で執筆した10人が思いを述べた。救護被爆した母を持つ安芸高田市の中岡和範さん(74)は「差別を恐れ60代まで被爆者であることは隠してきた」。多発性骨髄腫を患い、その苦しみを知ってほしいと筆を執った。「原爆は、胎児にまで影響を及ぼす可能性がある、全く非人道極まる兵器」と訴えた。

 安芸区の泉本聖二さん(74)は、白島国民学校(現白島小)教員の母が大須賀町(現南区)で被爆し、偶然助けられて命拾いした体験を初めて書いた。証言活動をしている他の胎内被爆者の姿に背を押されたという。「原爆がどれだけひどいか」と言葉を詰まらせた。

 厚生労働省によると、胎内被爆で被爆者健康手帳を持つ人は今年3月末時点で6879人。代表世話人の二川一彦さん(74)=東区=は「一番若い被爆者と言われるが、原爆を知らない世代へ継承し、読む人に当事者意識を持ってもらいたい」と期待を込めた。

 A5判243ページで千部発行。県内外の図書館などに寄贈する。事務局の三村さん☎090(7375)1211。

(2020年12月16日朝刊掲載)

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