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[ヒロシマの空白 被爆75年] 被爆関連資料 共同活用へ 放影研/原医研 デジタル化 閲覧可能に

 被爆者の健康影響に関する広島市内の二つの研究機関が共同で歴史資料を保存、整理し、「デジタル・アーカイブズ」をつくる方針であることが30日、分かった。放射線影響研究所(放影研、広島市南区)と、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研、同)が、原爆被害や研究の歩みに関わる資料をデジタル保存し、データベースを構築。資料を社会へ発信し、研究者たちが使いやすくする。放影研の移転候補地として原医研がある広島大霞(かすみ)キャンパスが浮上する中、連携強化の動きとなる。(水川恭輔)

 日米両政府が共同運営する放影研は、1947年設立の米国の原爆傷害調査委員会(ABCC)を前身とし、がん発生率などを調べてきた。原医研は61年に設けられ、白血病などを巡る研究をリードしてきた。

 保存・公開を進める柱の一つは、放影研が持つ歴史的文書だ。被爆者から被爆状況などを聞き取った記録、研究内容をまとめたABCC時代の刊行物、広島の地元医師たちとの関わりを伝える資料などを想定している。

 記録文書の保存を専門とする原医研付属被ばく資料調査解析部の久保田明子助教(アーカイブズ学)たちが協力する。目録作りや劣化具合に応じた保存措置を行い、資料をスキャンしてデジタル保存。原医研は、自ら所蔵している被爆直後の被害調査記録などについても同様の作業をする。

 その上で、双方の資料の画像データを研究者や市民が検索・閲覧できるアーカイブズを構築・運営する方針。個人情報保護のため、内容によっては一部を非公開とするなどの段階を設ける検討もする。

 放影研の丹羽太貫理事長と原医研の田代聡所長が4月に事業推進に合意し、担当者が計画の具体化を進めている。丹羽理事長は「紙資料の劣化は共通の課題。原医研の専門家の協力を得て、資料の保存と情報共有を進めたい」とする。

 放影研と広島大は今月3日、比治山公園にある放影研の移転候補地として霞キャンパスを加えると発表。放影研は21年6月の評議員会で市総合健康センター(中区)を含めた二つの選択肢から移転先を決めたいとしている。

(2020年12月31日朝刊掲載)

[ヒロシマの空白 被爆75年] 資料劣化に危機感 放影研と原医研 共同活用へ

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