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核禁止条約が発効 被爆地 廃絶へ前進願う

 核兵器禁止条約が22日、批准国それぞれの現地時間午前0時に発効した。核兵器の開発や使用を全面禁止する国際条約が効力を持つ一方、核保有国や米国の「核の傘」に依存する日本政府は参加しないまま、この日を迎えた。広島では被爆者団体などが記念の集いを無観客で催す。条約発効を追い風に被爆地から訴えを広げ、核なき世界の実現を誓う日となる。(久保田剛)

 条約は核兵器に関するあらゆる活動を禁じ、使用や保有に加え「使用するとの威嚇」なども対象とする。未批准国には効力は及ばないが、「核兵器は違法」との価値観は国際社会で勢いを増す。法的根拠に基づいて保有国に圧力をかけ、核廃絶の具体的な動きにつなげられるかが課題となる。

 条約は、停滞する核軍縮に不満を募らせた非保有国が主導し、非政府組織(NGO)などと連携して形づくられた。「為政者に政策転換を促す局面が来た。核兵器は容認しがたいとの市民社会の声を世界の潮流にしたい」。広島市の松井一実市長は15日の記者会見で強調。会長を務め、核廃絶を目指す平和首長会議の加盟都市は1日時点で8千を超え、国家の枠を飛び越えて連携を訴える。

 新型コロナウイルスの影響で活動が制限される中、被爆者たちは誓いを新たにする。原爆ドーム(広島市中区)前では22日夕、市民団体などがキャンドルをともす。近くでは被爆者7団体などが「子どもたちの会」を催し、小中高校生が被爆者の思いを受け継ぐ決意を創作劇などで表現する。

 条約は2017年7月、国連で核兵器を持たない122カ国・地域の賛成で採択。昨年10月までに批准した50カ国・地域で今月22日の発効が決まった。昨年12月には51番目に西アフリカのベナンも批准した。

 前文で「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記した禁止条約。非締約国にも2年に1回の締約国会議や発効5年後の再検討会議にオブザーバー参加を認めている。「橋渡し役」を担うとする日本が会議に参加するかどうかも注目される。

(2021年1月22日朝刊掲載)

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