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ラムネ工場の「戦争」 動画に 安佐北区の住民グループ 広島市立大生協力 ちぎり絵で伝える

経営者である父親 中国で戦死

 広島市安佐北区安佐町で昨年末まで操業していた瓶入りラムネ製造工場の戦争下の実話を題材に、平和の尊さを伝えるちぎり絵の動画DVDを、市民グループが中心になって製作した。経営者である父親を戦争で失った家族の話。地域の戦争の記憶を、若い世代に継いでいこうと手掛けた。(重田広志)

 タイトルは「山のラムネの物語」。安佐町小河内にあったラムネ製造の山田飲料工業所では、創業した男性が軍に召集され、生まれた子どもの顔もほとんど見ないまま中国で戦死した。ラムネは嗜好(しこう)品のため製造を禁止され、鉄製の機械は武器生産のため供出された。そんな戦時の話を8分のちぎり絵の映像で展開している。

 この実話をモデルに紙芝居を作った市民グループ「待っとる間に鶴折る会・ヒロシマ」が、広島市立大(安佐南区)に映像化を相談。同工業所の2代目経営者だった山田義春さん(83)から当時の苦悩を聞き取った学生たちが色とりどりの紙でちぎり絵を作り、撮影した。グループが製作費を負担し、昨年11月に25枚のDVDを完成させた。

 山田さんは「悲しい歴史を後世に伝えてくれている。山あいの集落にも戦争が影を落としたことを忘れてはいけない」と強調する。

 グループは安佐北、安佐南両区の図書館などにDVDを配布。今後は親子向けの上映会を開くことも検討している。豊久芳光代表(56)は「若い世代に平和や戦争について考えてもらうきっかけにしたい」と話している。

(2021年1月30日朝刊掲載)

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