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庄原に平和推進条例 広島県内市町で初 市議会、来月提案

 庄原市議会は、恒久平和の実現に向けた市と市民の役割を明文化する「市平和推進条例」案を2月15日開会予定の市議会定例会に議員提案する。戦没者遺族や市民団体の意見を募り総務委員会で文案を練った。3月12日の本会議で採決予定で、広島県内の市町では初の成立となる見通し。

 前文と4条からなる理念条例で、教育、情報発信など市の平和関連施策の根拠と位置付ける。第1条に「目的」、第2条に「市の役割」を記す。第3条の「市民の役割」は「平和の推進に関する活動を主体的に行うよう努める」などと明記。努力義務規定であり罰則はない。施行に際して必要な事項は「市長が別に定める」(第4条)とした。

 総務委員会を中心に2018年に構想。同様の条例がある全国の自治体の視察を行ってきた。赤木忠徳委員長は「どんな時代、どんな首長であっても、平和の尊さを発信し、戦争の記憶を継承していくことが大切だ」と制定の意義を説明する。庄原には、広島への原爆投下後、運ばれてきた被爆者を住民が救護した記録が残る。

 総務委は文案づくりに向け昨年11月、市内の戦没者遺族会、女性団体、住民組織など8団体の代表者から意見を聴取。前文のたたき台は広島と長崎の惨禍に特化していたが、遺族会の思いを反映して「大戦」の表現を加筆するなど、より普遍性を高める修正をした。

 議会内には異論はなく、原案通り可決する見込み。同様の条例は広島県内の市町では広島市議会が制定へ作業を進める。同議会事務局によると2月15日開会予定の市議会定例会に条例案を上程し、3月下旬の本会議で採決する予定という。(小島正和)

≪庄原市平和推進条例案の骨子≫

(前文)
 尊い犠牲と引き換えに得た歴史的教訓を継承していくことが責務であることを確認し、被爆県の都市の市民として8月6日を決して忘れることなく、誰ひとりとして平和な日常を脅かされることのない社会の実現に努めることを決意する。
 第1条(目的)
 平和の推進に関し、市および市民の役割を明らかにし、市の施策の基本となる事項を定める。
 第2条(市の役割)
 市は、平和の推進に関する施策を策定し、実施するよう努める。
 市は、平和の推進に関し市民の理解を深めるため、必要な啓発および教育を行うよう努める。
 第3条(市民の役割)
 市民は、市の平和の推進に関する施策に協力し、平和の推進に関する活動を主体的に行うよう努める。

(2021年1月30日朝刊掲載)

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