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被服支廠 予算計上せず 広島県21年度 判断先送りの公算

 広島県が広島市南区に所有する最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」で、県が2021年度当初予算案に保存や安全対策の事業費を計上しないことが4日、分かった。利活用策の決定が先とする声が県議会側に根強いのを踏まえた対応とみられる。保存か解体かの最終的な方向をまとめるのは、21年度以降となる見通しが強まった。

 県は3棟を持つ被服支廠を巡り、19年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」案をまとめたが、県議会などの意見を踏まえて20年2月に20年度の解体着手を見送った。湯崎英彦知事はその際、21年度当初予算編成に合わせて保存の方向性を決める考えを示していた。

 複数の関係者によると、県は昨年12月に3棟の耐震性の再調査結果をまとめたばかりで、保存については引き続き県議会との慎重な議論が必要とみている。

 再調査では外壁の一部や屋根瓦、軒先の劣化が判明した。このため、建築の専門家たちの意見を基に21年度当初予算案への安全対策の費用計上を探ったが、最終的には県議会側の意見を踏まえて見送ったという。

 県議会の中本隆志議長は「使用方法で必要な保存棟数は変わる。利活用の検討を急いでほしい」と注文している。県は当面、被爆建物の保存ノウハウを持つ広島市、別の1棟を持つ国を交えた3者で利活用策の検討を進めていく考えだ。

 再調査では、建物の耐震化の有無や活用方法に応じた1棟当たりの概算工事費を3億9千万~17億7千万円と試算した。17年度の前回調査から最大で半額になり、県の検討の行方が注目されていた。(樋口浩二、岡田浩平)

(2021年2月5日朝刊掲載)

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