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「黒い雨」控訴審結審 広島高裁 判決7月14日

 原爆投下後に放射性物質を含む「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い、健康被害が生じたと訴える広島県内の男女84人(うち12人は死亡)が被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の控訴審の第2回口頭弁論が17日、広島高裁であり、結審した。判決は7月14日の予定。昨年7月の一審広島地裁判決は全員を被爆者と認め、手帳の交付を命じた。

 被告の広島市と県、国側は「核爆発のメカニズムに照らせば、原告が浴びたとする雨に放射性微粒子が含まれていたと捉えることは科学的経験則に反する」との準備書面を陳述。健康被害を生じる可能性があるほどの放射線被曝(ひばく)をしているとはいえないとして地裁判決の取り消しを求めた。

 原告側は準備書面で「原爆放射線の人体への影響は完全に解明されておらず、被爆者援護法も黒い雨には放射性微粒子が含まれ、健康被害が生じる可能性があることを前提にしている」と訴え控訴棄却を求めた。

 地裁判決は、放射性微粒子を含む黒い雨が、国の援護対象区域よりも広範囲に降ったと認定。原告が黒い雨を浴びたことと、がんや白内障などの疾病との関連が想定されるとし、全員を被爆者と認めた。被告側は控訴するとともに、厚生労働省が「援護対象区域の拡大も視野に入れた再検討をする」と表明。昨年11月に専門家による検討会が始まった。(松本輝)

(2021年2月18日朝刊掲載)

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