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「黒い雨」3大学調査へ 京都・広島・長崎 土壌採取など着手

 米国による広島市への原爆投下後に降った「黒い雨」の被害を巡り、厚生労働省は18日、国の援護対象区域を再検証する検討会の第2回会合を東京都内で開いた。降雨区域を調べるための気象シミュレーションと土壌調査を、京都大、広島大、長崎大が連携して実施することが決まった。

 この調査の取りまとめ役を務める京都大複合原子力科学研究所の五十嵐康人教授がビデオ会議システムで参加し、調査方法を説明した。広島大大学院の遠藤暁教授たち計6人が3月末までに作業手順書を作り、2021年度から土壌採取などに着手。調査結果と気象シミュレーションを組み合わせて降雨区域マップにまとめるという。

 厚労省はこのほか、新規に国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)にある被爆体験記の分析に取り組むことを報告。被爆当時の気象状況の文献調査▽広島県・市に健康不安を相談した人の病状解析▽広島赤十字・原爆病院(同)のカルテ調査―の進行状況も説明した。

 調査の方向性を巡っては委員の意見が分かれた。長崎で被爆した日本被団協の木戸季市事務局長が「単なる数値のみを根拠にするべきでない」と幅広く救済するよう求めたのに対し、援護対象区域の拡大に慎重論も出た。

 長崎大の柴田義貞客員教授は「10万人以上が亡くなった東京大空襲との兼ね合いを考えねば」と述べ、原爆被害を特別扱いするべきでないと主張。名古屋大大学院の山沢弘実教授も「援護対象を広げることにはかなり慎重になるべきだ」と指摘した。(河野揚)

(2021年2月19日朝刊掲載)

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