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被爆ギター 平和の調べ 広島で28日 プロ奏者がコンサート

 広島で守り伝えられてきた被爆ギターを奏でる初めての本格的なコンサートが28日、広島市中区の県民文化センターである。広島市を拠点に活動するクラシックギター奏者、石原圭一郎さんが平和への祈りを込めて名曲を披露する。

 被爆ギターは1930年代後半、19世紀の古典ギターを模して国内で製造されたもので、広島県海田町の井上進さん(65)が被爆者の父親から受け継いだ。原爆投下時は爆心地から約3キロの旭町(南区)の井上家にあり、壊れた家の中から見つかった。2006年に修復して音色がよみがえり、井上さんが平和イベントなどで演奏してきた。

 石原さんはエリザベト音楽大を卒業後、クラシックギターの本場のスペインに7年間留学。マドリード王立音楽院などで学んだ。井上さんも一員である「広島ギター協会」の会長を長年務める。約10年前に被爆ギターと出合い、「独特の柔らかい響きに魅了された」と振り返る。

 石原さん主宰のギター教室の生徒である作家ささぐちともこさん(西区)が昨年、このギターを題材にした児童文学「ラグリマが聞こえる」(汐文社)を出版。新たに被爆ギターに関心を持つ人が増えていることから、「実際の音色に触れてもらいたい」とコンサートを開くことにした。

 プログラムの前半は現代ギターで名曲を、後半は被爆ギターでタレガ「ラグリマ」をはじめ、19世紀ギター音楽の最高峰の作曲家と称されるF・ソル「祈り」、世界平和の象徴として愛されるカタルーニャ民謡「鳥の歌」などを奏でる。

 午後2時開演。2500円、学生2千円。新型コロナウイルス感染防止のため満席の半数に当たる約260席を販売する。来場者にはマスクの着用などを呼び掛けている。石原ギター教室☎090(4148)3775。(西村文)

(2021年2月19日朝刊掲載)

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