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元原爆資料館長畑口さん 胎内被爆者手記 廿日市市に寄贈

 廿日市市宮島口の元原爆資料館長畑口実さん(74)が、母親の胎内で原爆に遭った被爆者の体験手記「生まれた時から被爆者―胎内被爆者の想(おも)い、次世代に託すもの」を同市に寄贈した。8日、市役所を訪れ、松本太郎市長に1冊を手渡した。

 本は、「胎内被爆者の会」(原爆胎内被爆者全国連絡会)が昨年、全国の42人から体験記を集めて作った。広島鉄道局(現広島市南区)で被爆した父を捜すために入市被爆した母の胎内にいた、同会会員の畑口さんも執筆した。

 手記で畑口さんは、父がいない寂しさを感じ、被爆後に生まれたのに被爆者であるのが嫌だった苦悩を明かし、「原爆」「平和」の言葉を聞くのもおっくうだったとつづっている。原爆資料館の館長になり、世界各国の要人を案内するなどの経験を重ねたが、「理不尽な出来事、これがゲンバクだ」との思いは変わらないとしている。

 寄贈は計約10冊で、はつかいち市民図書館などで読める。畑口さんは「市民にも平和への関心を広めてほしい」と望んでいた。受け取った松本市長は「市民への働き掛けを考えたい」と応じていた。(木下順平)

(2021年3月9日朝刊掲載)

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