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原民喜の言葉 次世代に 被爆作家 没後70年 広島市内 碑前祭や作品朗読会

 広島市出身の被爆作家、原民喜(1905~51年)の没後70年を迎えた13日、市内では碑前祭や作品の朗読会が相次いで開かれた。小説「夏の花」をはじめ、自らの被爆体験を基に多くの作品を残した民喜。紡いだ言葉に向き合い、参加者は次世代への継承を誓った。(明知隼二)

 「ヒロシマのデルタに 若葉うづまけ 死と焔(ほのお)の記憶に よき祈(いのり)よ こもれ」

 原爆ドーム(中区)そばの碑前では、民喜の詩「永遠(とわ)のみどり」を朗読する高校生や大学生の声が響いた。民喜を顕彰する市民の会「広島花幻忌(かげんき)の会」による集いで、約70人が唱和した。

 朗読した大阪大1年の中原奏(かなで)さん(19)は、母親の影響で幼い頃から民喜の作品に触れてきた。死や生を描く言葉の生々しさや美しさに引かれたという。進学先の大阪で、民喜をテーマに友人を広島へ案内できないかと検討中。「民喜は悲惨な状況で詩を書き残した。その叫びを次世代につなぎたい」と力を込めた。

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(中区)では「夏の花」などの朗読があり、約40人が聴いた。同館はこの日、民喜の次兄一家4人の遺影を新たに登録したとも明らかにした。守夫さん、妻良子さん、長男邦彦さん、四男文彦さんの4人。一家の次男で、民喜の著作権を継ぐ時彦さん(86)=南区=が協力した。

 時彦さんもこの日、母である良子さんの被爆証言を朗読した。「民喜は無口で、なぜ遺書で私を継承者に指名したかは分からない。権利だけではなく、思いを継がなければ」と話した。

(2021年3月14日朝刊掲載)

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