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弾頭数 上限引き上げ 広島の被爆者 英に怒り 核軍縮の期待 一転

 英国政府が、冷戦終結後で最も包括的な外交・安全保障政策の一体的見直しとなる「統合レビュー」で核弾頭保有数の上限の引き上げを表明して一夜明けた17日、広島の被爆者たちは怒りの声を上げた。米ロ英仏中の核兵器保有5大国の中で核軍縮に最も前向きとされ、保有国で最も早く核兵器禁止条約に参加するとの期待があっただけに、落胆が広がっている。(水川恭輔、小林可奈)

 「核軍拡の方に走る方向転換だ。怒りに堪えない」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(79)は、憤りをあらわにした。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2020年1月時点の英国の核兵器数は、保有5大国で最も少ない215発。10年には、核弾頭の上限を20年代半ばまでに180発とすると決めていた。

 にもかかわらず、一転して260発に引き上げるとの表明に、もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(76)は「保有国の中で先頭に立って核軍縮を進めてほしかった」と落胆した。

 国内外で被爆体験を証言してきた被爆者の田中稔子さん(82)=広島市東区=は「許せない」と強調した。英国をはじめ、欧米各国には禁止条約を支持する市民が多いとして「保有国の政府が逆行するような時こそ、核兵器廃絶を目指す各国市民の連携が重要だ」と説いた。

 英国は、禁止条約制定へ機運を高めたオーストリアでの「核兵器の非人道性に関する国際会議」(14年)に、5大国では米国とともに参加した。その後は17年の制定交渉に出ないなど、禁止条約に背を向ける。

 ただ、非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))などの中には「5大国で非核化と禁止条約への参加が最もあり得るのは英国だろう」との期待感があった。ICANの川崎哲(あきら)国際運営委員(52)は「5大国では核兵器の削減が最も模範的だった。大変残念な動きで、核軍拡競争を助長するものだ」と嘆いた。

(2021年3月18日朝刊掲載)

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