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拡大区域 489編に「降雨」 「黒い雨」再検証 祈念館の手記調査

 米国による広島市への原爆投下後に降った「黒い雨」の被害を巡って厚生労働省が進める援護対象区域(大雨地域)の再検証で、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)に被爆直後の降雨を記した被爆体験記などの資料が1685編あることが18日、分かった。3割弱に当たる489編が広島県と広島市が降雨域として推定し、援護対象区域に加えるよう求めるエリアに含まれていた。  厚労省が東京都内で開いた再検証の検討会で報告した。被爆者健康手帳の交付の前提となる対象区域の外でも「被爆後に雨が降った」との多くの証言がある実態が浮き彫りになった。

 厚労省によると祈念館が所蔵する被爆体験記や証言ビデオ全15万439編のうち、被爆地が広島で「雨」に関する記述が確認された資料5880編を抽出し調査した。同館職員15人が読み込み、被爆直後に雨が降った趣旨を含む資料を1685編と特定。うち29%の489編が県、市の求める援護対象の拡大地域と分かった。拡大地域に含まれない呉、江田島市などの降雨証言も5編あった。残る1191編の大半は援護対象区域内だった。

 厚労省は「降雨地域の範囲を調べるために価値のある調査内容」としている。今後は、降雨の証言があった地域での健康被害の有無などをつぶさに調べ、援護対象区域の拡大が必要かどうか判断する構えでいる。

 会合では、気象の専門家から「県、市が求める拡大区域の根拠があいまいだ。さらに外側も調べるべきだ」との意見も出た。佐々木康人座長は「調査するかどうか検討する」と判断を留保した。(樋口浩二)

(2021年3月19日朝刊掲載)

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