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外需見込めず ため息 五輪・パラ 海外観客断念で中国地方 開催中止望む声も

 東京五輪・パラリンピックで海外からの一般観客の受け入れ断念が決まって一夜明けた21日、インバウンド(訪日外国人客)需要や国際交流に期待していた中国地方の観光地に「残念」「仕方がない」との受け止めが広がった。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ面から、開催の中止を求める意見もあった。(余村泰樹、加田智之、衣川圭)

 外国人に人気のサイクリングコース、瀬戸内しまなみ海道を抱える尾道市。沿線の観光振興を図る官民組織「しまなみジャパン」の合田省一郎専務理事は「外国人の長期滞在には期待していた。感染状況を見るとしょうがないが、本当に残念だ」と声を落とした。

 被爆地から世界への平和発信の好機と捉えていた人々も戸惑う。平和記念公園(広島市中区)でガイドする米国出身のメアリー・ポピオさん(29)=西区=は「訪日客にヒロシマの経験を伝える機会と思っていたのでがっかり。オンラインでメッセージを広げたい」と話した。

 21日での緊急事態宣言の解除を受け、海外より国内に目を向ける観光地もある。湯田温泉旅館協同組合(山口市)の吉本康治事務局長は「県内や近隣のお客さんが戻ることを望む」と言う。宮島観光協会(廿日市市)の上野隆一郎専務理事は「五輪の有無に関係なく、1、2年はインバウンドに期待できない」。

 感染が収まらない中、海外からの入国を疑問視する声も強い。ゲストハウス広島マングタック(中区)を運営する楠勝也社長は「海外客を今の状態で受け入れたら大変。コロナ禍が収まるまでは五輪自体を控えた方がいい」ときっぱり。肺に持病のある中区の大工西原信幸さん(66)は「変異株にはワクチンが効くかどうかも分からないと聞く。海外から観客が来ることが不安だった」と明かす。

 平和記念公園を散歩していた近くの主婦富永祐子さん(63)は「世界の人々と国際交流できなくなってまで、五輪をやる意味はあるのか」と問い掛けた。

(2021年3月22日朝刊掲載)

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