×

ニュース

大石又七さん死去 「遺志継ぐ」「影響大」関係者や広島の声

 核兵器の恐ろしさを訴え続けた第五福竜丸の元乗組員大石又七さん(87)の訃報が伝わった21日、関係者や広島の被爆者たちに悼む声が広がった。

 「自分が伝えなければ真実が埋もれてしまうとの一心で、孤独な闘いを続けてきた。意欲は衰え知らずだった。志を引き継ぐ」。第五福竜丸展示館(東京都)の学芸員市田真理さん(53)は言葉を詰まらせた。

 大石さんは第五福竜丸事件から50年の2004年、非政府組織(NGO)ピースボートの船旅で、参加者に体験を語った。19年には広島訪問を控えたローマ教皇に手紙を出し、核実験被曝者にも目を向けたメッセージの発信を求めた。

 ピースボートの川崎哲(あきら)共同代表(52)は「核の犯罪性を鋭く語り、若者たちの心をつかんでいた。体験を通じて核兵器を批判する方が減る中、その穴を次世代がどう埋めていくのか、問われている」と惜しんだ。

 広島県原水禁の金子哲夫代表委員(72)は、11年の福島第1原発事故を受けた福島県での集会で、大石さんの証言を聞いた。「同じ核の被害者として福島の人たちに真摯(しんし)に向き合う姿勢を感じた」と話した。

 県被団協の佐久間邦彦理事長(76)は「死の灰を浴びた乗組員と、黒い雨を浴びた被爆者の姿が重なった。反核運動の盛り上がりに大石さんたちの活動の影響は大きかった」と悼んだ。

(2021年3月22日朝刊掲載)

年別アーカイブ