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平和の鐘 鳴り響け 旧広島市民球場跡近く 修繕や周辺整備進む

 旧広島市民球場跡地(広島市中区)近くにあり、1949年の第3回平和祭(現平和記念式典)で鳴らされた「平和の鐘」の周辺整備を市が進めている。被爆した鋳物職人たちが、焼け跡で集めた金属で造った鐘。市民が集い、復興の音色を自由に鳴らせるようにする。

 高さ9メートルの鉄製の鐘楼につるされており、高さ1・4メートル、重さ800キロの洋風のベル型。ハトと「NO MORE HIROSHIMAS(ノーモア・ヒロシマズ)」の文言がかたどられている。広島銅合金鋳造会の職人らが、原爆犠牲者への鎮魂の思いから制作し、市に寄贈した。

 鐘はその後、放置に近い状態だったが、広く知ってもらおうと市民の有志らが「響け!平和の鐘実行委員会」を2015年に結成。毎年8月6日に祈念式を開き、市の許可を得て安全を確認した上で鐘を鳴らしている。だが年1回の行事では、鐘の知名度は上がらない。そこで実行委と職人の遺族会は、周辺整備などを求める要望書を17年と19年、松井一実市長宛てに提出していた。

 市は昨年12月に工事を開始。周囲を整地して芝生を植え、鐘楼の基礎部分を修繕した。6月以降、訪れた人が自由に鳴らせるようにする予定。実行委の船越聖示さん(91)=佐伯区=は「被爆者の平和への思いが形になったもの。後世に伝えたい」と話している。(新山京子)

(2021年4月5日朝刊掲載)

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