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被爆者医学調査・研究資料 国に保存対策要望へ 広島市長

 広島市の松井一実市長は7日、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研、広島市南区)や放射線影響研究所(放影研、南区)が持つ被爆者の医学面の調査・研究資料について「被爆者の協力で得られた世界的に貴重な資料」と述べ、将来への保存を確かにするアーカイブ化の取り組みを国に働き掛ける考えを示した。

 松井市長は記者会見で貴重な資料として、原医研が所蔵する被爆直後に広島で活動した京都大調査班による被爆者の健康調査票や、放影研が長年の調査で蓄積してきた資料を例示した。その上で、このような調査・研究資料の保存・活用は「人類にとって意義がある。被爆の実態を広め、伝える広島の立ち位置と共通する」と強調した。

 日本学術会議から1971年に原爆被害に関わる学術的資料の保存や活用を勧告されるなど、国もアーカイブ化の意義は認めていると分析。「財源措置を含め、国へのお願いはしっかりとしていく。地元でできることも整理し、取り組む」と述べた。

 被爆者の医学面の調査・研究資料は近年、経年劣化の深刻化が指摘されている。市、広島県と8研究・医療機関でつくる放射線被曝(ひばく)者医療国際協力推進協議会(HICARE)が2月に開いたシンポジウムでも、構成機関の研究者から保存対策の必要性を指摘する声が出ていた。(水川恭輔)

(2021年4月8日朝刊掲載)

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