×

ニュース

被爆証言者減少 35人に 中区で2年ぶり委嘱式 平均85.5歳 新参加者ゼロ

 自らの被爆体験を語る広島市の「被爆体験証言者」の委嘱式が9日、中区の原爆資料館であった。本年度に証言者として活動するのは、78~93歳(1日時点)の35人。昨年度と比べて6人減り、新たな参加者は5年ぶりにゼロだった。被爆者の高齢化が進む中、証言者は被爆の実態を伝え続ける思いを新たにした。

 委嘱式は、昨年度は新型コロナウイルスの感染拡大で開いておらず、2年ぶりの開催となった。資料館を運営する広島平和文化センター(中区)の小泉崇理事長が、出席した29人にそれぞれ委嘱書を渡し、「核兵器廃絶と世界恒久平和への思いを国内外に訴え続けてほしい」と呼び掛けた。

 35人の平均年齢は85・5歳。死去や高齢による引退で、近年で最も多かった2015年度(49人)と比べて14人減った。李鐘根(イ・ジョングン)さん(92)=安佐南区=は「核兵器や戦争、差別をなくすため、命ある限り被爆の実態を伝えていく」と誓った。

 証言者は1年間、資料館や派遣先の学校などで、あの日の記憶を証言する。昨年度は392回、計約2万9千人に講話した。

 この日は、証言者の記憶と平和への思いを語り継ぐ「被爆体験伝承者」の委嘱式もあった。本年度は149人が活動する。新型コロナに伴う研修の延期で、唯一、新たに加わった主婦茂津目恵さん(48)=南区=は「被爆者から直接話を聞ける世代の私たちが、記憶を次世代に伝えていきたい」と語った。(小林可奈)

(2021年4月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ