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毒ガス弾?放置 海底367ヵ所で金属反応

■毒ガス問題取材班

 旧日本軍の毒ガス工場があった竹原市大久野島沖で1月、毒ガス弾とみられる不審物が見つかった問題で、環境省が敷設を計画した海底送水管のルート一帯367カ所で金属反応が確認されていたことが13日、分かった。一帯の海底に多数の不審物が残っている可能性が浮上している。

 環境省は「工事には危険を伴う」として、既に約4億3500万円を投入した海底送水管の敷設事業を断念したが、367カ所での金属反応が判断に大きな影響を与えたとみられる。  中国四国地方環境事務所(岡山市)によると、海底探査は工事の安全確認のため昨年12月に始めた。委託業者が、島北側と対岸の竹原市忠海地区を結ぶ2.4キロの敷設ルート沿いに、磁気探査船での金属反応調査と、ダイバーによる潜水調査を実施。幅は50メートルの範囲を対象にした。

 忠海側から島に向けての磁気探査は8割ほど終わった時点で、金属反応を367カ所で確認した。直後の1月19日、ダイバーが水深約20メートルの海底で不審物約20個を発見し、作業を中断した。島の北側約60メートルの地点だった。367カ所には、空き缶など金属類のごみも含まれているとみられるが、瀬戸内海で海底探査の実績がある民間業者は「同規模の探査では、ほかの海域より多いのではないか」と話す。

 毒ガス工場があった大久野島の周辺海域には、毒ガス弾や毒物を詰めたボンベなどが投棄された記録や証言が残る。戦後はボンベなどを引き揚げた漁業者たちの被害が相次いだ。1969年に海上自衛隊が掃海したが何も発見できなかった一方で、その後も被害が発生した。

 地元の市民団体「毒ガス島歴史研究所」(竹原市)は「1969年の掃海区域には、今回の海底探査区域は含まれていない。国が最新技術であらためて徹底調査をすべきだ」と訴えている。


大久野島周辺海域の毒ガス被害
 旧日本軍の毒ガスに関する環境省の全国調査(2003年)では戦後、周辺海域で漁船が引き揚げた毒ガス入りボンベなどで被害者が発生したケースは1946-71年に7件を確認。58年にはボンベの解体作業中に青酸ガスが漏れて1人死亡、27人が負傷した。ほかにボンベが3件発見された記録がある。環境省は今年1月に見つかった不審物について、ヒ素を含むくしゃみ性ガスの「あか筒」の可能性があるとの見方を示す。

(2009年5月14日朝刊掲載)

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