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許す心 伝えたい 広島出身・在米 美甘さん 英文の本 自費出版

 広島市東区出身で米国・サンディエゴに住む臨床心理ドクターの美甘(みかも)章子さん(52)が、両親の被爆体験や生きざまをつづった英文の本「RISING FROM THE ASHES(不死鳥のごとく~ヒロシマで生き抜いて許すこころ)」を自費出版した。(二井理江)

 父の進示さん(87)=東区=は19歳の時、爆心地から約1・2キロの広島市上柳町(現中区上幟町)で被爆し、右半身を大やけどした。一緒にいた祖父は行方不明、祖母は実家の岡山で病死、父の兄は戦死した。このため、進示さんは身寄りがなく、苦しい戦後を過ごした。

 章子さんの母、美代子さん=2008年に80歳で死去=は被爆当時は18歳。爆心地から約700メートルの福屋(現中区胡町)のビル内で被爆し、ガラスが背中に刺さった。

 章子さんは幼い頃、主に父から被爆体験を聴いて育った。常に「原爆を落としたのは問題だが、悪いのは米国ではなく戦争。違う立場の人を理解できるようになってほしい」と、許す心と感謝する大切さを諭されていた、という。

 心理学を学ぶため、1989年に渡米。以来、世界の人たちに実情を知ってもらうために、父母の体験を英語で書きたい、と思いを膨らませていた。

 本の出版は、被爆65年を迎えた10年8月にサンディエゴで「世界平和を願う会」を開いたのがきっかけ。核被害の大きさと、今後、核兵器を含む大量破壊兵器を使わないように、との思いを若い世代に伝えたい、と執筆を始めた。

 縦23・0センチ、横15・3センチで204ページ。14・99ドル。日本からもインターネットで購入できる。「父に、日本語版を早く出すように言われている。実現できれば」と笑う。

(2013年9月23日朝刊掲載)

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