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8月6日の入市被爆はマンガン主因 広島大原医研・大谷助教ら解析

 広島に原爆が投下された1945年8月6日に入市し、被爆した青壮年期の男性は、9日以降に入市被爆した同年代男性と比べ、がんによる死亡リスクが高いことが、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の大谷敬子助教(統計学)たちの解析で分かった。入市被爆をもたらした残留放射線の主要な発生源が、土中などに含まれるマンガンであることも特定した。(馬場洋太)

 70~2011年に生死を追跡できた入市被爆者約4万7千人を対象に調べた。入市日を6、7、8日と、比較対象の9日以降の計4グループに分類。さらに男女、年代別にも分け、白血病を除くがんによる死亡リスクを比較した。

 その結果、6日に入市被爆した当時30~49歳の男性は比較対象より、75歳時点でのがんによる死亡リスクが高かった。例えば、被爆当時に30歳だった男性は18%、40歳の男性は40%近く高かった。

 この理由を説明するため大谷助教たちは、入市被爆の主因となった物質の特定を試みた。放射線量が半分に減る時間を表す「半減期」が約2時間半のマンガンだと、6日は放射線量が高いが7日はほぼなくなり、6日入市者だけリスクが高いことに符合する。

 マンガンは土中に豊富に含まれる物質。原爆で放射された中性子をマンガンの原子核が吸収すると、放射性マンガンに変わる。

 これまで候補に挙がっていたナトリウムやスカンジウムは半減期がそれぞれ15時間、83・8日と長く、6日入市者だけリスクが高い理由を説明できないため、候補から外れた。

 大谷助教は「青壮年期の男性は爆心地近くで捜索や救護に当たった人が多い。遺体処理などで放射能を帯びたマンガンを含む土ぼこりを吸入し、内部被曝(ひばく)した可能性がある」と分析。残留放射線が強かった6日と、7日以降の入市被爆者のリスクが異なる結果に「残留放射線の影響は無視できないといえる」とみる。

 研究結果は、18日に青森市で始まる日本放射線影響学会で発表する。

内部被曝研究に弾み

 原爆の線量評価に詳しい広島大の星正治名誉教授(放射線生物・物理学)の話

 候補と考えていたナトリウムの可能性を統計的に否定でき、内部被曝の研究を進める上で大きな成果だ。放射性マンガンを土ぼこりとして吸い込んだなら肺がんの増加が考えられるので、臓器別に解析すれば研究の精度がより高まるだろう。

(2013年10月12日朝刊掲載)

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