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被爆講堂に「勇気」の歌声 戦後の演奏会 中高生が再現

 原爆投下の翌年、広島市の旧制高校や専門学校の男女が集い、歌声を響かせた「広島学生音楽連盟」。4年ほどの活動で使った施設のうち、唯一今も残る南区の広島大付属中・高講堂で12月1日、現代の中高生が、舞台を再現する。演奏会「ヒロシマ・音の記憶」シリーズの第4弾。被爆建物でもある会場で、先人の思いを継承する。(松本大典)

 同連盟は、旧制の広島高等学校(現広島大)や広島女子専門学校(現県立広島大)など少なくとも6校の100人余りが参加。焼失を免れた市内の施設で転々と演奏会を開いたとされる。同講堂は貴重な活動拠点の一つで、演奏中の写真も残る。

 演奏会は、ヒロシマに関する音楽作品の発掘、データベース化に取り組む「ヒロシマと音楽」委員会(渡部朋子委員長)が主催。「音楽の力で市民を励まそうとした先輩の心意気を受け継いでほしい」と、広島大付属中・高に出演を持ち掛けた。

 歌と演奏を担うのは、同校の中高生でつくる合唱班と管弦楽班の男女約70人。同連盟のメンバーがよく歌っていたというシューベルトの「菩提(ぼだい)樹」やシューマンの「流浪の民」などをよみがえらせる。

 本番に向け練習は大詰め。合唱班班長の2年井上実乃里さん(17)は「時代を超えたつながりを感じる。心を一つにして歌いたい」。管弦楽班班長の2年三好妃奈子さん(17)も「戦後間もない広島で生きる勇気を届けた同世代に負けないように、私たちなりに音楽の力を伝えたい」と意気込んでいる。

 ほかに、大木惇夫作詞、山田耕筰作曲の「ヒロシマ平和都市の歌」なども披露。ソプラノの乗松恵美(39)=安佐北区=をソリストに迎え、オペラ「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」などのアリアも響かせる。

 演奏に先立って同連盟の足跡をたどるドキュメンタリー映画「音の記憶・つながり」(同委員会企画・製作)も上映する。午後2時開演。入場無料。同委員会Tel082(502)6304。

(2013年11月23日朝刊掲載)

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