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「矛盾が浮き彫り」 広島の被爆者ら 失望の声 岸田外相 核発言

 岸田文雄外相が20日、核兵器の限定的な使用を容認するかのような発言をしたことに、被爆地広島からは失望や疑問の声が上がった。

 「あの共同声明は、その場しのぎだったのか」。広島県被団協の坪井直理事長(88)は怒りを口にした。

 日本政府は昨年10月、核兵器の非人道性に焦点を当て、「いかなる状況下でも核兵器を使用するべきではない」と訴える国際社会の共同声明に初めて賛同。被爆地選出の岸田氏のリーダーシップを喜んだ。だからこそ坪井氏には「ずるい」と映る。

 もう一つの県被団協(金子一士理事長)の大越和郎事務局長(73)は「米国の差し出す核の傘に安全保障を委ねながら、核兵器廃絶を掲げるという日本の矛盾があらためて浮き彫りになった。これこそ国際社会の信を失う」と批判した。

 大越氏は疑問も口にした。「なぜこのタイミングで、被爆地長崎で、言う必要があったのか」

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)は、外相発言の背景を推察する。「日米の関係においては、日本の安全が極限の状態に追い込まれた場合に備え、米国の核使用を留保する、と解釈できる。日本は引き続き、核の傘を求めることができるとの意味だ」と解説した。

 一方、広島市の松井一実市長はコメントしなかった。市平和推進課は「外務省に問い合わせても、詳しい発言内容がつかめなかったため」としている。(岡田浩平)

(2014年1月21日朝刊掲載)

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