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原爆ドーム 初の耐震補強 広島市方針 震度6弱想定

 広島市が世界遺産・原爆ドーム(中区)の長期保存に向け、初めて耐震補強工事をする方針を固めたことが23日、分かった。壁をくりぬいたサンプルの強度を検証した結果、一部が強い揺れに弱いことを確認。南海トラフ巨大地震で想定される震度6弱でも耐えられるようにする。2014年度当初予算案に設計費を盛り込む方向で最終調整している。

 市は07年度から始めた耐震調査の一環で、12年1月に初のコンピューター解析に着手。01年3月の芸予地震の際に市で観測した震度5弱▽震度5強▽南海トラフを震源とする巨大地震により市内で想定される最大の揺れの震度6弱―を想定してシミュレーションした結果、はりの支えがない部分など四つのエリアに負荷が集中した。

 この解析結果を確認するため、13年6月に壁の15カ所から円柱状の試料をくりぬき、専門機関でれんがの強度などを調査。市内が震度6弱の揺れに襲われた場合、即座に構造的な損傷が発生する恐れはないものの、完全に耐える補強が必要と判断した。

 市は14年度、耐震補強工事の実施設計に着手する考え。国史跡であるため文化庁と協議して工法を詰める。市は1967年と89年、接着用樹脂を壁に注入するなど大規模な保存工事をしている。耐震工事は初めてとなる。

 96年に世界遺産に登録された原爆ドームの保存をめぐって市は06年3月、「平和記念施設」の保存・整備方針をまとめた。少なくとも2045年の被爆100年までは現状保存し、大規模改修は極力避ける方針でいる。(加納亜弥)

(2014年1月24日朝刊掲載)

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