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Let’s広響 戦禍の日独 祈り奏でる 31日 シェーファー集大成

 広島交響楽団の第335回定期演奏会(31日)は、厳かな空気に包まれそうだ。ドイツを拠点に活躍する広島市安芸区出身の作曲家細川俊夫が、1945年に両地であった二つの「空襲」を思い、壊された自然にささげた鎮魂の曲を奏でる。

 広島では初演となる「星のない夜―四季へのレクイエム―」。2010年10月、ドイツで世界初演された曲は、語りや合唱を交えた全9曲からなる。第1楽章の「冬に」から最終楽章の「浄(きよ)められた秋」まで四季に沿った構成。その流れを二つの悲劇が引き裂く。

 ドイツの古都ドレスデンへの大空襲と広島への原爆投下。第3楽章「ドレスデンの墓標」では、2月13日から3日間続いた空爆の目撃証言が、第7楽章「広島の墓標」では、8月6日の出来事をつづった詩集「原子雲の下より」にみられる被爆少年の詩が語られる。

 悲しみと怒りに満ちた歌声、摩擦音や打撃音など特殊奏法を織り交ぜた管弦の響き…。曲想は、おぞましい。ただ、悲嘆ばかりではない。もともとドレスデンの爆撃で壊滅した聖母教会の復興記念に委ねられた作品。「悲しみや怒りの底に再生への希望を託した」と細川は説く。ソリストは、半田美和子(ソプラノ)と藤井美雪(メゾ・ソプラノ)。語りは藤井と俳優の高尾六平が担う。

 指揮は、広響首席客演指揮者として最後のステージとなるヘンリク・シェーファー。08年5月から5年半、故国ドイツの精神を広島にもたらしてきた集大成を見せてくれるに違いない。

 カップリングに選んだのは、モーツァルトのフリーメーソンのための葬送音楽と、「北欧のモーツァルト」と呼ばれるヨーゼフ・マルティン・クラウスの交響曲。ともに短調の誠実な曲だ。

 定演の2週間後にはドレスデンの悲劇が始まった「あの日」を迎える。鎮魂の祈りを届けよう。

 開演は午後6時45分、広島市中区の広島文化学園HBGホール。5千~4千円(学生1500円)。広島交響楽協会と中国新聞社の主催。広響事務局Tel082(532)3080。(松本大典)

(2014年1月28日朝刊掲載)

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