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原爆ドーム 耐震補強 15年度着工 広島市表明 「外観損なわず」

 広島市の松井一実市長は28日、世界遺産・原爆ドーム(中区)で初めての耐震工事を実施すると正式に表明した。壁をくりぬくサンプル検査で、一部の壁が揺れに弱いことが分かったため。南海トラフ巨大地震で想定される最大規模の震度6弱でも耐えられるようにする。設計に2014年度着手し、被爆70年の15年8月6日以降に工事を始める。(加納亜弥)

 市は、ドームの耐震性を1年かけてコンピューター解析して13年1月に公表。はりの支えがない壁など四つのエリアに揺れの負荷が集まることなどが判明した。

 解析結果を確認するため、円柱状の試料17本をくりぬいて強度を調査。震度6弱でも倒壊する恐れはないが、揺れが壁に対し垂直方向に襲った場合、壁が反ることでれんがをつなぐモルタルの強度が保たれず、一部が破損する恐れのあることが分かった。

 市は今後、有識者でつくる市の原爆ドーム保存技術指導委員会や文化庁と協議し、工法を決める。14年度当初予算案に設計費を盛り込み、15年度の着工を目指す。補強鋼材を壁につけるなどの工法が想定され、松井市長は記者会見で「外観を損なわないよう工夫したい」と強調した。

 同委のメンバーで福山大工学部の鎌田輝男教授(耐震工学)は「壊れた建物の耐震補強は普通の補強工事とは次元が違い、非常に難しい」と指摘。広島大大学院の三浦正幸教授(文化財学)は「大規模な補修をすると尊厳性が薄れる。最低限の修理で耐震性を高めるしかない」と話している。

(2014年1月29日朝刊掲載)

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