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東日本大震災から3年 石森弁護士 東電への損賠訴訟準備

 東日本大震災で被災した石森雄一郎弁護士(34)=広島市中区=は昨春、福島県郡山市から妻の実家のある広島市に移住し開業した。「被災した弁護士としての使命を果たしたい」。福島第1原発の事故の影響で広島県内へ避難してきた被災者と面会を重ね、東京電力に損害賠償を求める方法などを助言している。(久保田剛)

 「訴訟にまつわる内容だけではなく、日常の悩みから耳を傾ける姿勢が大切だと思う」。石森弁護士は「原発損害賠償請求を支援する弁護士の会」のメンバーに語り掛けた。2月中旬、中区の弁護士事務所であった打ち合わせ。東電などを相手取った集団訴訟への準備を進める。

 石森弁護士は日ごろも避難者からの相談を受ける。「どんな賠償が受けられるのか」「家族に会うために使った交通費に領収書がない。請求できるのか」。避難者の口からは、疑問や不安がとめどなくあふれでる。石森弁護士は数時間でも耳を傾け続ける。

 「自分にしかできない役割だ。同じ被災者だからこそ避難者の気持ちを受け止めることができる」

 あの日、いわき市の裁判所で巨大な揺れに襲われた。郡山市の自宅は福島第1原発から約50キロ。妊娠間もない妻は2日後、広島市西区の実家に逃れ、その年9月に長女を出産した。

 石森弁護士は当初、古里に住み続ける決意だった。広島に来るよう求める妻と口論になったこともある。

 ただ、妻と娘から遠く離れた二重生活は、石森弁護士の心を疲れ果てさせた。そんな時、同会の弁護士に誘われた。「被災していない広島の弁護士が力を尽くしている。自分が背を向けることはできない」。広島に移住し、避難者を支援する決意を固めた。

 相談を受ける立場の自分ですら、古里のいまは見えづらい。「本当に安全なのか」「低線量被曝(ひばく)の影響は」。事実上、避難者独自の判断に任せっぱなしの状態に怒りを感じる。「どんな相談にも耳を傾け、国や東電の責任を問い続ける」と誓う。

(2014年2月27日朝刊掲載)

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