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　「なぜゲンばかり問題視するのか」―。大阪府泉佐野市教委が「差別的表現が多い」として、漫画「はだしのゲン」を市立小中学校から回収していたことが明らかになった２０日、作者の故中沢啓治さんの妻ミサヨさん（７１）は悔しさをあらわにした。

　「原爆や戦争の怖さを伝えるため、当時の様子を描写した。読んだ子どもが差別用語を使っているとでもいうのだろうか」と残念がる。

　漫画をめぐっては、昨年８月にも松江市教委が「描写が過激だ」として小中学校の図書館で閲覧制限していたことが分かり、撤回する騒ぎがあった。ミサヨさんは「苦しくても強く生きてという子どもたちへのメッセージを、作品全体からくみ取って」と訴える。

　批判の声は広島の被爆者たちにも広がった。広島県被団協（金子一士理事長）の大越和郎事務局長（７３）は「学校図書を総点検して、差別的表現があれば回収するのか。全く理屈になっていない」。もう一つの県被団協（坪井直理事長）の箕牧（みまき）智之事務局長（７２）は「私たちが体験した原爆の惨状を描いた作品。素直に受け止めて子どもに読ませてほしい」と話した。（岡田浩平）

（２０１４年３月２０日夕刊掲載）