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原発停止でも黒字化へ 今後10年供給「未定」 中電14年度計画

 中国電力の苅田知英社長は27日、島根原発(松江市)2号機が2014年度中に再稼働できなくても、コスト削減などで同年度の純損益を黒字化させる考えを示した。電気料金の値上げも避ける。原発の再稼働などの見通しが立たず、併せて発表した電力供給計画も、供給力の今後10年の見通しを3年連続で「未定」とした。(山本洋子)

 広島市中区の本社で開いた14年度の経営計画の発表会見で明らかにした。苅田社長は、13年度を上回って過去最大規模となる670億円の経営効率化をすると説明。「効率化や火力発電所の順調な稼働といった前提がクリアできれば、仮に原発が動かせなくても黒字化は目指せる」と述べた。13年度は150億円の最終赤字を見込む。

 13年度も実施した工事の中止や繰り延べに加え、資機材の調達などで複数社による競争発注の比率を高めてコストを圧縮したり、人件費を削減したりして収支を改善させる。

 島根2号機の再稼働の時期は「いつという見通しはいえない」とした。原子力規制委員会が求める周辺海域の活断層の追加調査について「精度の高い最新のデータで疑問に応えるため、追加調査をやると決めた」と明らかにした。

 新規制基準への対応は、費用面でも膨らむ。島根原発1~3号機の安全対策費の試算は、昨年6月末時点の「1千億円以上」から「2千億円程度」に積み増した。規制委の審査に伴って火災や放射線防護などで新たな追加対策を講じる。今後さらに上振れする可能性も示した。

 この日発表した供給計画は、今後10年の販売電力量の伸び率を0・8%と想定。今夏の電力供給については「景気回復で産業需要が伸びて余裕がない。火力発電所の計画外停止のリスクもある」として需給の見通しを先送りした。

「再稼働」は必要 苅田社長一問一答

 苅田社長の会見での主なやりとりは次の通り。

 ―運転40年を迎える島根原発1号機の対応は。
 運転を続けるには特別な点検が必要で、投資も要る。電力需給などさまざまな角度から検討する。動かすお願いをする選択肢もあるし、廃炉という選択肢もある。来年7月までに判断する。

 ―「原則廃炉」と述べた松江市の松浦正敬市長の発言をどう受け止めますか。
 基本的には1号機を廃炉にするかは中国電力が決める。ただ、関係自治体の意見は重要な要素であり、私たちもよく聞いていく。

 ―3号機の適合性審査はいつ申請しますか。
 できるだけ早い申請に向けて準備を進めている。現政権は3号機を出来上がった発電所と捉えている。新増設ではないと理解されていると考える。

 ―2号機が審査を終える見通しは。
 明確にできない。審査の指摘に真摯(しんし)に対応していくとしか言えない。

 ―原発が稼働しなくても、2015年3月期は黒字化できますか。
 ベースとなる火力発電所が順調に稼働し、670億円程度の経営効率化を着実にやれば黒字化できると織り込んでいる。電気料金の水準も維持できる。収支の抜本改善には再稼働が必要だ。本来必要な工事の繰り延べも含む効率化も限界に近く、長期的な安定供給を考えれば長続きしない。

 ―上関原発建設予定地の埋め立て免許延長申請をめぐる山口県からの照会に対する回答は。
 国のエネルギー政策の方向性が議論されており、その内容を踏まえて回答する。上関計画が国の重要電源開発地点に指定されていることも確認して、(4月11日が目安の)期限までに答えたい。

(2014年3月28日朝刊掲載)

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