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被爆後12年 復興記録映画「ひろしま」発見 来月公開

■記者 新田葉子

 原爆投下から12年後に制作された記録映画「ひろしま」が見つかった。広島市が復興を国内外にアピールするために制作。他の資料に埋もれ、長年存在を忘れられていた。市公文書館(中区)は「復興期のまとまった映像は珍しい」とデジタル保存する。8月20日から中区の福屋八丁堀本店である市制施行120周年展で公開する。

 「ひろしま」は、16ミリフィルムで約25分のカラー映像。制作した1957年の7月に完成した旧広島市民球場(中区)をとらえ、「広島が最も誇る夜空に浮かぶ夢のダイヤ」と語る。平和大通りや太田川放水路の整備風景も活気があふれる。

 ラストシーンは、「十三回忌」に当たる8月6日の平和記念公園(同)の様子を映し出す。宗派を超えた合同慰霊祭や平和記念式典が続き、「(原爆を)再び許さない」というナレーションで締めくくる。

 市公文書館の職員が市広報課に眠るフィルムを見つけた。制作の経緯を調べるうちに、英語版の存在も判明。所有していた故渡辺忠雄元市長の長男、渡辺直行弁護士(63)=西区=から寄贈を受けた。

 市議会の議事録によると、制作費は222万円。毎日映画社が制作を請け負った。故渡辺元市長が渡米の際に持参して、復興ぶりを紹介し、58年の広島復興大博覧会への観光客誘致に活用したとみられる。

 市公文書館の高野和彦館長は「昭和30年代前半の様子をまとまった形で撮影した記録映画はとても珍しい。復興に向かう被爆地の全体像が分かる」と説明する。9月1日まで開く市制施行120周年展で上映する。無料。

(2009年7月31日朝刊掲載)

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