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社説・コラム

社説 北朝鮮核実験 国際圧力で暴走止めよ

 アジアの平和と安定を脅かすばかりか、核軍縮に向けた国際的な機運の高まりに逆行している。北朝鮮の2回目の核実験だ。先月は人工衛星を打ち上げるとして長距離弾道ミサイルを発射した。度重なる暴挙は許せない。国際社会が協調し、これ以上の挑発に歯止めをかける必要がある。

 北朝鮮の核実験は2006年10月以来となる。国連安全保障理事会は当時、二度としないよう求める制裁決議を採択した。それに反しているのは明らかだ。

 安保理は、先月の長距離ミサイル発射問題でも北朝鮮を非難する議長声明を出した。その反発が背景にあるようだ。「謝罪しなければ、核実験や大陸間弾道ミサイルの発射実験を行う」と北朝鮮は明言していた。

 危機感をあおって相手に譲歩を迫るという、これまで何度も繰り返してきた瀬戸際外交といえる。核実験をちらつかせて国際社会に揺さぶりをかければ、米国を交渉のテーブルに引っ張り出せると考えていたのだろう。

 「核兵器のない世界」を目標に対話重視の外交を打ち出すなど、オバマ大統領が就任して米国の政策は大きく転換した。話し合えば金正日(キムジョンイル)政権の生き残り策を探れる-との期待があったのかもしれない。しかし、オバマ米政権は応じなかった。

 しびれを切らした形で、北朝鮮が強行した今回の核実験。「核兵器保有国」であることを認めさせれば、米国との協議で有利な立場に立てるとの思惑があったようだ。金総書記の健康不安を抱えているがゆえの焦りが表れている、と指摘する専門家もいる。

 前回の核実験は爆発の規模が1キロトン未満と小さく、失敗だったのではないかとの見方もあった。今回は規模が十数倍になったともいわれ、技術改良が進んだことをうかがわせる。併せて短距離ミサイルも発射した。周辺国にとっては脅威が増した。

 ただ北朝鮮は、一段と国際的な孤立を深めるだろう。何より最大の支援国である中国や、ロシアとの関係が悪化しかねない。両国はミサイル問題が安保理で議論になった時、厳しい姿勢の日米に対抗して、北朝鮮寄りとも思える態度を示した。しかし今後は、そうはいかないだろう。

 日本は、米国や韓国とともに中ロと連携し、時間はかかっても北朝鮮が六カ国協議に復帰するよう圧力をかけることが必要だ。

 とりわけ中国の協力が欠かせない。北朝鮮に強い影響力を持つだけに、制裁の効果を左右し、対話の糸口ともなる。非核化を進めさせる上でも、情報や意見交換をさらに緊密にしていきたい。

 まず急がれるのは、安保理が核実験に対して厳しいペナルティーを科すことである。ミサイル発射で経済制裁を強化したばかりで、どれほど中身を濃くできるか、疑問もある。しかし国際社会が一致して毅然(きぜん)とした態度を示すことこそ、北朝鮮のさらなる暴走を封じ込める一歩となろう。

(2009年5月26日朝刊掲載)

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