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社説・コラム

天風録 「夢を読む」

 夢の膨らむ話かな。寝ている人の脳を分析し、見た夢を当てる―。京都の民間研究所が成功したという。男性3人に車、文字、人などの写真を見せて脳の活動パターンを計測。睡眠中のそれと照らし合わせ、7割以上を的中させた▲実験を300回ほど繰り返して得た成果だそうだ。一方、こちらは解析するまでもない。心を寄せればすぐに分かる。米軍機に脅かされず暮らしたいという、沖縄県民が抱く積年の願い。夢どころか、ごく当たり前のこと▲なのになぜ、政府は読みとれぬ。嘉手納基地より南の施設などの返還計画で、日米が合意した。普天間飛行場は早くて9年先。それも辺野古への移設を条件にした。「県外」を望む沖縄と、「県内」にこだわる政府と、脳の構造は異なるらしい▲太平洋戦争末期から、沖縄は悪夢のような現実に見舞われてきた。遅れて「日本」に戻ってからも。普天間の全面返還にしても17年前に合意したはずでは。夢を夢のままで終わらせようというのか▲被爆地が訴え続ける「核兵器のない世界」も、沖縄の思いと相通じるだろう。分析やご託はもう要らない。目を覚まして行動するとき。悲願のまま封じ込めないよう。

(2013年4月7日朝刊掲載)

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