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社説・コラム

『潮流』 展望デッキから見えるもの

■岩国総局長 山岡達

 2階の展望デッキに上がると、駐機中の旅客機が間近に見えた。ところが壁には「基地内の写真及びビデオ撮影はご遠慮ください」という注意書き。「軍民共用」を知らない人は戸惑うだろう。ここは開港から4カ月が過ぎた岩国錦帯橋空港―。

 国道から案内板に沿って進むと、両側に米海兵隊基地のフェンスが見えてくる。その先に広い駐車場と、ガラス張りでコンパクトな造りのターミナルビルはある。自然光をうまく取り入れた明るいビル内は、基地の中の空港であることを忘れそうになる。

 むろん旅客機や見学者の記念撮影は禁止されていないが、基地内の撮影が目的ならば展望デッキから「退出していただきます」と。米軍への配慮だろうか。デッキから遠くに米軍機や海上自衛隊機が離着陸する姿が見えた。

 半世紀ぶりの民間航空再開。全日本空輸が岩国―東京・羽田の1日4往復を運航し、「東京が本当に近くなった」と地元企業関係者は口々に歓迎する。立地からしてアクセスの良さが売りだ。3月の搭乗率は75・1%で、今月も好調が続いているという。

 ある大手旅行会社は東京からのツアーに、岩国錦帯橋空港と萩・石見空港を出入り口とした商品を登場させた。萩、秋吉台、錦帯橋、宮島などを巡るものでなかなかの人気という。

 第三セクター岩国空港ビル副社長の大村慎一さんは、ターミナルビルを「ふれあいのある空間」と見立てる。「市民が気軽に立ち寄れるようにしたい」と、利用促進に向けた取り組みを思い描く。

 私事だが、岩国勤務は11年ぶり2回目。民間航空再開への道のりは長かったと個人的にも実感している。

 青森県・三沢空港と同じ米軍との共用空港。その意味はこれからも考え続けなければならないだろう。

(2013年4月23日朝刊掲載)

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