×

社説・コラム

天風録 「屈辱と痛恨の日」

 全国的に晴れやかな空に恵まれた連休である。海、山がまぶしい。南の島では一足先に夏色が鮮やかだろう。と思いきや、きのう沖縄の緑と青はいつもと違った。県民が憤りと悲しみをにじませ、のぼり旗を翻した▲政府が祝った「主権回復の日」。61年前、講和条約で日本は独立を取り戻す。沖縄や奄美、小笠原の島々を除いて。すなわち4・28は沖縄「屈辱の日」。抗議大会には約1万人が集まってシンボルカラーの緑で染めた▲「沖縄の苦労に、通り一遍の言葉は意味をなさない」。首相は式典で配慮したつもりだろうが、県民は再び切り捨てられたと収まらない。那覇市は悲しみを表す紺色の布を掲げた。奄美群島も「痛恨の日」として苦い記憶を刻む▲がってぃん(合点)ならん―。沖縄の不信は募っている。首相が強調した「日本を強くたくましく」の言葉にも。先月、政府が辺野古の埋め立てを県に申請したためだ。基地負担をどこまで押しつけるのか▲きょうは昭和の日。少し前まで、みどりの日といった。激動の昭和はもはや遠くなったろうか。だが沖縄は今も踏みにじられている。あの緑色が問い掛けるものへ、心を寄せねばならない。

(2013年4月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ