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社説・コラム

中国新聞 政経講演会 支持獲得後 改憲に向かう 政治評論家 有馬晴海氏

安倍政権の課題と展望

 中国新聞社と中国経済クラブ(山本治朗理事長)は24日、広島市中区の中国新聞ビルで中国新聞政経講演会を開いた。政治評論家の有馬晴海氏が「安倍政権の課題と展望」をテーマに話し、「安倍晋三首相は経済を上向かせて国民の支持を得、憲法改正に力を注ぐ」と指摘した。要旨は次の通り。(岡田浩平)

 「アベノミクス」の効果で経済が好調に推移している。安倍首相の就任後、株価は上がり、円高も改善した。これまで首相が6人続けて1年前後で代わり、デフレ脱却へ十分な政策を打つ余裕がなかった。

 国民は、安倍首相を全面的に信頼しているわけではないが、このまま頑張ってほしいという思いだろう。

 アベノミクスの第1の矢は、物価を2%引き上げる金融緩和だった。物価を上げれば、働く人の給料も上げないと経済が回らないという考えだ。だから、安倍首相は労働者の給料を上げてほしいと経済界に要請している。これは以前なら、社民党の役割だった。

 第2の矢が財政出動だ。いろんな職種に少しずつ公共事業でお金が回るようにした。

 そして第3の矢は成長戦略。安倍首相は就任後、企業経営者たちを連れて外遊を重ね、日本政府が援助するので道路を造るよう、訪問国に働き掛けている。その工事を日本の企業に任せてほしいと要請している。

 さらに、2020年の東京五輪開催が決まり、日本に来る人たちにお金を落としてもらおうと、国内でのカジノ産業の整備も国会で焦点になっている。

 何事も右肩上がりは続かないし、安倍首相の支持率も経済も、落ち込む時は来る。野党が奮起しないといけないが、ことし7月の参院選に自民党が勝ち「1強」の状態で野党に攻撃力がない。

 民主党は、有権者から「政権交代の期待を裏切った」と思われている。日本維新の会も橋下徹共同代表の「慰安婦発言」などで1年前のような勢いがない。現状では安倍首相に期待するしかない。

 では、安倍首相に死角はないのか。一つは激務による健康問題だ。難病の潰瘍性大腸炎という持病がある。参院選から臨時国会開会まで3カ月空いたのは外遊に加え、休養を取る考えもあった。あとは重要閣僚の失言だろう。

 6年前に退陣した安倍首相は、経済を立て直したいために、首相再登板を目指したわけではない。憲法改正が一番の目的だ。

 9条を変えたいのは間違いないが、改正手続きを定めた96条も視野にある。1カ所でも変えることができれば、祖父の岸信介元首相もできなかった改憲を初めてやり遂げた首相だといえるからだ。

 そのために経済を上向かせ、国民に気持ちよくなってもらいたいと考えている。それが安倍政権だ。

ありま・はるみ
 1958年、長崎県生まれ。55歳。立教大経済学部を卒業後、リクルート社員、国会議員秘書を経て、96年から政治評論家。テレビ、ラジオでコメンテーターを務め、週刊誌などに連載を持つ。

(2013年10月25日朝刊掲載)

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