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社説・コラム

『潮流』 被災地にもらう元気

■論説委員・岩崎誠

 東北の被災地で最大規模という仮設商店街は、思った以上に活気があった。

 大津波で壊滅した宮城県気仙沼市の中心部にある「南町紫市場」を訪ねた。元の商店街跡近くに2階建てのプレハブを連ね、復興への道を踏みだして今月で2年になる。

 すし店にトンカツ店、薬局や電気店に美容室から学習塾まで。往時の160店のうち集うのは54店だが、昔から「気仙沼の顔」と呼ばれた店ぞろえを思わせる。日曜だけに復興支援ツアーのバスから降り立つ観光客の姿も目立った。

 商店街副理事の坂本正人さん(56)の話を聞いた。あの日は裏手の高台の神社に逃げて助かった商店主たち。目の前の惨状に、もう商売は諦めようとの空気があったという。

 1カ月ほどたって有志によるコロッケや下着の路上販売が始まる。飛ぶように売れていく。まさに商いの原点に返った手応えに結束が強まり、再生への熱気が高まったのだ、と。胸に迫るエピソードである。

 震災前はいわゆるシャッター通り。大型店に押され、休日に開けない店も多かった。「震災で失われたものは大きいが、リセットの起爆剤にという声も強い」と坂本さん。2年以内に本格的な集合型店舗の着工を目指し、海の幸を各店が競う「すし通り」のアイデアも出ているそうだ。

 もちろん悲願の新店舗も国の復興予算が頼り。今はある復興特需もいつまで続くか分からず、先行きが十分見通せないのも確かだろう。どの仮設商店街にも共通する悩みのようだ。

 全国的にみても地方の商店街の将来を悲観的に考える見方は強い。尾道市内の商店街振興組合の自己破産申請もショックだった。

 「頑張れば売れる」と信じて力を尽くす被災地の元気も見習いたい。また気仙沼を訪れ、すし通りを食べ歩く日が待ち遠しい。

(2013年12月7日朝刊掲載)

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