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社説・コラム

憲法 解釈変更を問う 元金融・郵政改革担当相・亀井静香さん

無理して変える必要ない

権力振り回さず冷静に

 集団的自衛権の行使を認めてしまうと、米国などから「一緒に戦え」と言われる危険性がある。限定的に見直したとしても、将来どうなるか分からない。今は平和憲法が盾になっている。日本は平和国家を目指し、国際紛争の解決の手段として戦争をしないという理想を掲げてやってきた。憲法の範囲でできることをやればいい。無理して変える必要はない。

 安倍晋三首相が2月、行使を認める憲法解釈の変更をめぐり国会で「最高責任者は私だ」と答弁したことに疑義を呈す。

 首相が全権を握っているような物言いはおかしい。歴代内閣は、今の憲法と現実との間を埋める解釈の努力をしてきた。その延長線上で物事を考えるべきだ。結論までの経過を抜きに決めるとなれば独裁。なぜ、あんな言葉を使うのかね。

 憲法は改正した方がいい。今の憲法には日本人が長い間営んできた良いものを守ろうという精神が流れていないからだ。首相もそう思っているだろう。しかし今の政治家、国民に改正する資格はない。安倍政権下ではなおさらだ。政治自体が力を失い、国民は自らの利益ばかりを追うようになった。そういう人間が子々孫々に伝える国家の基本をいじれますか。

 中国や韓国、北朝鮮との今の関係の中で取り組めば、戦時下で憲法をつくるような雰囲気になる。

 1979年の衆院選で初当選。現在は広島6区選出の無所属で、当選12回。自民党時代は運輸相や建設相、党政調会長を歴任。郵政民営化をめぐって同党を離れ、国民新党を結成。金融・郵政改革担当相も務めた。

 自分も権力を振るった。ただ権力はいつか手放す。今は敵方でも、彼らのことを考えて一定に政策の継続性を保たないといけない。後先考えずに権力を振り回すと、時代を経る中で国家はがたがたになる。首相はそれを肝に銘じ、憲法にも冷静に向き合ってほしい。

 特定秘密保護法成立後の昨年12月、首相と面会し、同法の慎重な運用を求めた。

 第2次安倍政権は社会の右傾化に乗っかる格好で誕生した。「右バネ」が利いた政策を打ち上げ、実現できなければ逆にその右バネにはじき飛ばされる危険がある。

 昨年末に会った時、「相手が力ずくできたらかわし、その力を利用して制するんだぞ」と助言したら、「中国が東シナ海上空に防空識別圏を設定した問題はそう対応します」と言っていた。でも、首相という存在は冷静に、全てにおいてそうしなければいけない。

 首相には衆知を広く集める努力をしてほしい。お友達内閣と言うが、本当に友達かな。

 内閣にも、党内にも、耳が痛くとも大切な忠告をしてくれる人がいない。自分の思い込みだけで人材を集めては駄目だ。反原発とか、一番まともなことを言っているのは昭恵夫人。まず昭恵夫人の言うことをよく聞きなさい。(聞き手は城戸収)

(2014年3月26日朝刊掲載)

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