×

連載・特集

50年の原水爆禁止運動 <2> デモかパレードか

■記者 金井淳一郎、桜井邦彦

掲げる思いどう伝える

 行進を先導する「非核」の横断幕は、一晩明けると「なくそう核兵器」に代わっていた。

 3日、広島市安佐南区の祇園大橋から連合広島の行進がスタートした。前日、この地点まで到着したのは原水禁国民会議の非核平和行進。被爆地を目指してのリレーだが、横断幕は引き継がない。

異なる横断幕

 原水禁と連合広島の平和行進は3年前から、同じ日の同じ時刻に平和記念公園(中区)にゴールする。しかし、メンバーが重なることはあっても、先頭の横断幕は異なる。ネックは原水禁がうたう「非核」。加盟団体に電力系労組も抱える連合は、原子力の平和利用に配慮せざるを得ない。両者が一致するのは核兵器の廃絶―。

 約200人が参加した連合の行進には、30年前から原水禁の行進に参加してきたという自治労広島県本部の向井高志さん(56)の姿があった。「平和や核兵器廃絶を目指す気持ちが同じであれば、形は関係ないよ」

 行進は、労働組合の集会でおなじみの単組の旗は掲げなかった。シュプレヒコールもしなかった。被爆者や遺族の心境に配慮してのことだ。

仮装やギター

 イラク戦争を機に、日本を含む世界中で「ベトナム戦争以来」といわれるほど盛り上がった反戦運動。参加した若者たちは、思い思いの仮装や手書きのメッセージを掲げたり、ギターを奏でたりした。それは旧来型の「デモ」ではなく、「パレード」などと呼ばれた。

 日本原水協などの「国民平和大行進」に参加する若者の中にも、サッカーの応援スタイルを取り入れたり、はやりの歌を歌う動きがある。しかし、一部にすぎない。原水禁も含め、のぼり旗にシュプレヒコールといったスタイルは今も主流だ。

 連合広島の行進に「労組から動員されて」初参加したという男性(32)もいた。「人目を引くために派手にするのはどうかと思う」。祖父と祖母は被爆者だと明かした。

 バス停前で行進を見やる西区の会社員女性(32)は「付き合いで参加しているのか、本気さが伝わらない。日常的な毎年の光景」。沿道にはそんな厳しい目もある。

 先の初参加の男性は「続けることで、8月6日を心に刻むきっかけになるはずだ」。再び黙々と歩いた。

(2004年8月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ