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連載・特集

原水禁運動とフクシマ 2011年世界大会から <上>

事故の波紋 「脱原発」が議論の柱に

 福島第1原発事故は原水禁国民会議などと日本原水協などがそれぞれ開く原水爆禁止世界大会での議論の方向性を大きく変えた。核兵器廃絶運動をけん引してきた原水禁運動は原発にどう向き合うのか。今年の大会の議論を通して課題を探る。

 「いま求められるのは一人一人がフクシマの現実に向き合うこと。核兵器も原発も放射能の被害が出る。同じ核の問題だ」。7日に原水禁が連合、核禁会議と共催した平和ナガサキ大会で川野浩一議長が訴えると大きな拍手が起きた。

 これまでも「脱原発」を議論の中心に据えてきた原水禁。今年は初めて福島で大会を開催し、その色を強めた。分科会では原子力に依存する社会を問い直すことや再生可能エネルギー開発の必要性を指摘する意見もあった。また「運動が事故を防げなかった」との反省の声が相次いだ。

副議長触れず

 一方、核兵器廃絶で連携する連合、核禁会議との距離も浮き彫りになった。連合は電力会社の労組を抱え、核禁会議は「原子力の平和利用」を推進する。平和ナガサキ大会で連合の古賀伸明会長がエネルギー政策の見直しを訴えると会場から「脱原発も言え」と声が上がった。核禁会議の大山耕輔副議長は原発事故に触れなかった。

 「脱原発」をスローガンから現実に向かわせる影響力を持つ運動へどう高めるのか、一筋縄ではいかない。

 原発事故の衝撃は、もう一つの大会を開いた原水協にも及んだ。

 原水協は「原発は未完成の技術」とプルトニウム利用など個別の課題は批判的に取り上げてきたが、原発の是非を真っ向から論じることはなかった。

 だが、6日の世界大会・広島での決議文に初めて「原発からの撤退と自然エネルギーへの転換」を盛り込んだ。被爆者や核実験の被害者に加え、福島原発とチェルノブイリ原発の被災者の支援者を招き「ヒバクシャの連帯」を押し出した。

 「脱原発はかつてない世論のうねりだ。これからも議論の柱になる」と1955年の第1回大会から毎年参加する佐藤光雄・大会運営委員会代表はいう。一方で「あくまで原水爆禁止の大会。原発を無くそうとの大会ではない」と指摘。両被爆地で原爆の日に開く大会の意義が薄まってはならない、とする。

「矛盾」と指摘

 脱原発とこれまでの核兵器廃絶の取り組みは両立しない、との指摘もある。原水禁の世界大会に出席した非政府組織(NGO)ピースボートの川崎哲共同代表は「核拡散防止条約(NPT)は核軍縮と原子力の平和利用の推進がセット。NPTに依拠した核軍縮の訴えは脱原発と矛盾する」と指摘する。

 被爆国からの訴えをどう再構築するのか、原水禁運動は大きな課題を突きつけられている。 (金崎由美、岡田浩平)

(2011年8月11日朝刊掲載)

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