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連載・特集

原水禁運動とフクシマ 2011年世界大会から <下>

連帯の行方 課題共通 分裂に疑問も

 「日本のどこにも原発はいらない」「ノーモア・フクシマ」。9日に長崎市であった日本原水協などの原水爆禁止世界大会最終日。福島などの代表団が「脱原発」の横断幕を壇上で掲げた。「原発からの撤退」を決議した今大会を象徴する光景だった。

 終了後、千葉県から初参加した19~25歳の専門学校生の女性3人は「核兵器と原発の怖さが分かった。両方ともいらない」と異口同音に話した。ただ、彼女たちは市内で同時に原水禁国民会議などによる別の原水爆禁止世界大会が開かれているのは知らなかった。

 米国のビキニ水爆実験で第五福竜丸が被曝(ひばく)したのを機に広がった原水爆禁止運動。第1回世界大会は1955年に開かれた。その後、旧ソ連などの核実験の評価をめぐり旧社会党系と共産党系の意見が対立。旧社会党系の原水禁と共産党系の原水協に分裂した。

歴史的な背景

 原水禁は75年、「反原発」を含む「核絶対否定」を表明。原水協は原発への是非には触れてこなかった。

 だが、両者の違いは日本社会を揺るがす原発事故の前に吹き飛んだ。両大会とも今年、「脱原発」を明確に打ち出した。主張に大きな違いが無くなったいま、なぜ二つの団体のままいなければならないのか、多くの人には疑問に映る。

 そんな声に対し、原水協の高草木博代表理事は「核兵器や原発に反対する団体は多い。原水禁との関係だけ抜き出して論じるのはいかがか」という。原水禁の井上年弘事務局次長も「外に広げるほうが運動を強化できる」と述べ、事故後にわき起こる市民運動との連携を視野に入れる。

 「再統一」に関する両者のこうした態度の背景には、原水禁運動自体が政党・労組の立場の違いに振り回された歴史がある。「政治の場での訴えが重要な役割を担ってきた現実もある」という関係者は少なくない。

30歳以下5割

 だが被爆者の高齢化が進む中、その志を継ぐ原水禁運動の新たな担い手をどこに求めるのかは喫緊の課題だ。原水協の大会では例年、参加者にアンケートをしている。この10年間は30歳以下の参加者が5割を超えている。「平和活動家が多かった」(原水協役員)以前と変わってきているという。

 今年の原水禁の福島大会には、原発事故の被災者や被災地で健康問題に取り組む若者のグループも参加。裾野は広がりつつある。労組員が中核を担うこれまでのスタイルに新たな参加者をどう取り込み発展させるのか。大きな岐路にきている。

 長く日本の反核平和運動をリードしてきた両団体。原発事故は核兵器廃絶と脱原発を望む市民との連帯と、組織の論理を乗り越えた連帯という共通の課題を与えた。運動の真価が問われる。(金崎由美、岡田浩平)

(2011年8月12日朝刊掲載)

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