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連載・特集

避難者たちの年の瀬 <下> 古里支援 踏み出す一歩

原発の是非問い掛ける

 観光客が集まる広島市中区の原爆ドーム前に28日、署名用紙を抱えた衣山弘人さん(54)の姿があった。福島県南相馬市から家族4人で南区に移り住んで初めての年の瀬。原発の是非を問う国民投票の実現を呼び掛けた。

健康不安訴え

 「福島からの避難者です」。立ち止まる人たちに、福島第1原発から18キロの自宅には放射性物質の汚染で帰れない現状や、子どもの健康への不安を話す。

 「こんな事をするのは生まれて初めて。故郷を失った者として、原発についてみんなで考えてほしくて」。9月から1人で集めた署名は2500人を超えた。ことしは30日まで続けるつもりだ。

 家庭の事情から避難できない福島の母親を支える人もいる。福島県いわき市から安芸区に子ども3人と自主避難している三浦綾さん(38)。「広島からできることはないか」と思案。8月に知人と支援グループ「Wendyひろしま」をつくり、福島に野菜を送る活動に力を入れる。

野菜売り好評

 安全な食材探しに苦労する母親たちの話を聞いたのがきっかけ。福島で自らが運営していた子育て交流施設での販売を仲間に相談。これまで岡山市や東広島市福富町の農家から野菜を調達し、19日にもいわき市で販売して好評だったという。「協力してくれる農家を募り、息の長い活動にしたい」と意気込む。

 民間レベルで、食品の放射能測定所の開設を目指すのは、岡山市や尾道市に住む避難者でつくる「子ども未来・愛ネットワーク」。寄付を広く呼び掛け、来年3月をめどに持ち運び可能な測定器を購入する考えだ。

 購入後は広島県東部と岡山県内を対象に、出張測定もする計画を立てる。「自分たちの子どもは、自分で守るしかない」。ネットワーク代表で、福島県川内村から岡山市北区に避難中の大塚愛さん(37)は力を込める。

 この日、広島県内の市民団体や労働組合が中区の中国電力本社を訪れ、原発の建設中止などを求める申し入れ書を提出した。その中には自主避難中の2人もいた。東区で暮らす男性(45)は「放射能の心配を取り除くまで行動したい」。避難者たちの苦闘は続く。(川井直哉、教蓮匡孝)

(2011年12月29日朝刊掲載)

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