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連載・特集

「トホホ福島日記」 ⑨ 続く避難 母親気遣う長女

 娘の避難先の小学校給食からセシウムが検出された。微量ではあるがニュースになり、学校からもお便りが来た。もとより僕たちは既に、空間から外部被曝(ひばく)、食べ物から内部被曝している。印象に残ったのはそこではない。

 プリントを持ってきた長女はひたすら、母親にこのことについて感情的に問い詰めるな、と僕に繰り返した。泣きべそをかきそうになりながら繰り返した。

 3月にも漫画にしたが、僕達夫婦は、今回の件で、何度も救いようのないような夫婦げんかをしてきた。多くは子どものいない時を選んで、感情が爆発したことが多かった。直接見ていないにせよ、子どもたちはこの夫婦間の感情的なすれ違いを敏感に感じ取っている。

 僕は震災後、自分の沸点が低くなっていることを自覚している。以前なら、怒らなかったことに怒るようになっている。

 実家に転がり込んだ避難生活も1年4カ月になった。いつまでも居続けることはできない。長女は自分がセシウムを食べたであろうことに一言も触れずに、ひたすら母親にきつくあたるな、と繰り返した。(漫画と文・福島市の高校美術教師 赤城修司さん)

(2012年9月11日朝刊掲載)

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