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連載・特集

「トホホ福島日記」 ⑪ 異常が日常になる怖さ

 ある晴れた日、公園の脇を歩いていて、子どもを連れた母親とすれ違った。子どもは元気いっぱいで、母親の制止も聞かずスキップして走り回っていた。

 子どもが右にそれて、雑草が伸びきった公園に入ろうとした時に母親が言った。「やめなさい、そっちは(放射線量が)高いんだから」。それは例えば「ほら、信号赤だから止まりなさい!」と言うように、ごく普通の口調だった。驚くほど普通だった。

 僕は、あちこちで福島のことを話しながら、事あるごとに思う。「福島に住んでいる僕たちの感覚はほとんど、外に伝わっていない」。どこが線量が高くて、人それぞれどう受け止めているか。

 先日も、わが子が車の中で、普通に言った。「そっちは草ボーボーで、(放射線量が)高いよ」。それは例えば「ティッシュを取って」と同じ、余りにも普通の口調だった。

 僕は、放射能汚染をひどく心配している。そして、放射能汚染が当然になってしまうことには、もっと言い知れない怖さを感じているのである。(漫画と文・福島市の高校美術教師 赤城修司さん)

(2012年11月13日朝刊掲載)

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