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連載・特集

原発と環境 議論深める 新聞のある教室 山口県光市の光井中

 山口県光市の光井(みつい)中(鮎川友子(あゆかわ・ともこ)校長)の3年生は新聞記事を活用して、公民の授業を進めています。8日は3年C組で、地球温暖(おんだん)化とエネルギーについての授業がありました。

 社会科の岩本正信教諭(いわもと・まさのぶきょうゆ)が昨年12月、カタール・ドーハであった気候変動枠組(わくぐ)み条約(じょうやく)第18回締約国(ていやくこく)会議(COP18)の記事を配りました。教科書や資料(しりょう)集には載(の)っていない、現在(げんざい)の温暖化対策(たいさく)を教えるためです。岩本教諭は「各国で温暖化対策への言い分が違(ちが)います。では、日本はどのようにしたらいいのかな」と語り掛(か)けました。

 原子力発電について政党(せいとう)の方針(ほうしん)を検証(けんしょう)する記事を岩本教諭が読み上げてこう呼(よ)び掛けました。「原発は日本にとって必要だろうか。教科書や新聞記事を読んで立場を明らかにしてみよう」。生徒は3~6人の班(はん)に分かれ、意見を画用紙に書いてまとめました。

 「福島第1原発事故(じこ)の被災(ひさい)者のことを思うと反対」「事故があれば生活に支障が出る。リスクが高い」「日本の高い技術(ぎじゅつ)で、原子力に変わる発電法を開発できる」など原発に反対する意見が出ました。一方、「二酸化炭素の排出(はいしゅつ)量が少ない」「原子力発電は安定供給(きょうきゅう)できる」など賛成(さんせい)の意見もありました。

 岩本教諭は、中国地方で小規模(きぼ)な水力発電を紹介(しょうかい)した昨年12月19日付の本紙記事を新たに配り、「常(つね)に新しい話題に目を向ければ、議論(ぎろん)がより深まる」と話しました。

 光井中は2011年からNIE実践(じっせん)指定校になりました。3年生の教室の廊下(ろうか)には、全国紙や地方紙が置かれ、気軽に読めます。新聞を読む習慣(しゅうかん)がなかった生徒が、朝の読書の時間に新聞を広げる光景が見られるようになりました。(滝尾明日香(たきお・あすか))




探求する面白さ知って

社会科 岩本正信(いわもと・まさのぶ)先生
 約10年前から、授業に新聞記事を取り入れています。公民の教科書には、日本銀行の金融政策(きんゆうせいさく)や内閣(ないかく)の構造(こうぞう)などの図式が載っています。しかし、どれも簡略(かんりゃく)化され、具体的なイメージを持ちにくい。

 その点で新聞の解説(かいせつ)面は、詳(くわ)しく分かりやすい教材として活用できます。

 授業では、グループに分かれて単元に沿(そ)った議論をします。視点(してん)をはっきりさせ、踏(ふ)み込(こ)んだ議論をするためにも、新聞記事は欠かせない資料です。

 新聞記事を活用するのは、新鮮(しんせん)な話題が載っているからだけではありません。例えば、山口県周防(すおう)大島町出身で民俗(みんぞく)学者宮本常一(みやもと・つねいち)さんの特集記事。地元でありながらも、生徒が知らない歴史や話題があり、中国新聞の記事は何度も生徒に配りました。

 表面的な情報(じょうほう)だけでなく、自分で探求(たんきゅう)する面白さを生徒には知ってほしいです。

地域性あるスポーツ面

3年 葛原佑平(くずはら・ゆうへい)(15)
 小学生の時から新聞を読む習慣はありました。プロ野球とバスケットボールが好きなのでスポーツ面を読んでいると、1面や地方版(ばん)の記事も自然と目に入るようになりました。

 学校の廊下に全国紙と地方紙が置いてあるので、読み比(くら)べをするのも面白いです。スポーツの話題は、特に地域性(ちいきせい)があると思います。友人と教室の机(つくえ)で新聞を広げることも増(ふ)えました。新聞記事を参考にする授業でのディベートも、活気があります。

1面から読む習慣つく

3年 平嶋亜希(ひらしま・あき)さん(15)
 公民のテストは時事問題が出題されることが多いので、新聞を家で1面から読むようになりました。昨年の総(そう)選挙のことも出題され、新聞のコラムを読んでいたことが役に立ったと思います。

 授業でも新聞記事が配られ、最初は「難(むずか)しいな」と思っていました。でも、教科書に載っているニュースは古く、新しい出来事は毎日更新(こうしん)されます。世界で起きた新鮮なニュースと授業を連動させることで、授業も分かりやすくなりました。

(2013年2月24日朝刊掲載)

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