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連載・特集

『生きて』 ドキュメンタリー作家 磯野恭子さん <15> ジャーナリズム

信念持った情報発信を

 これまでは本当に忙しかった。これから私の人生をどう終えるかをいろいろと考えているところです。

 2010年6月の岩国市教育長退任後も、各地での講演が相次ぐ

 ちょろちょろと講演の依頼を受けます。公民館やNPO法人などに呼ばれますね。デジタル時代の番組の作り方やインターネットの見方などを話しています。

 毎月第1土曜日は岩国市内で女性に語っています。「いわくに女性会議」の磯野ゼミです。今月4日の会合では、ことしのまとめをしました。円高の進展や尖閣諸島付近での中国漁船衝突など外交問題を説明しました。

 コスト高にあえぐ日本企業はどうするのかといった内容も話題にしました。過去の成功を引きずっては世界競争を勝ち抜けない。日本にとって来年はより難しい年になるとの予感を伝えて、締めくくりました。

 いわくに女性会議は男女共同参画社会の実現を目指す約40人で構成。磯野さんは約30年前から講師を務める

 ジャーナリズムについても、もちろんお話します。地球上で戦争が終わらない。次から次へと新しい戦争がある。地球をめぐる環境も劣悪になっていく。世の中が移ろうスピードが速いから、情報を伝えるジャーナリズムには大きな役割がある。人気至上主義や偏った見方ではなく、国の行方などグローバルな視点が報道には求められているはずです。

 テレビはインターネットや携帯電話にチャンネルを奪われて、経営が難しくなるとか言われている。だけど、目で見るテレビは多くの人が最も身近な情報メディアと期待している。最近は娯楽色の強い番組が多い。今がおいしいから、今が楽しいから、今が利益になるからということばかりにスポットを当てるメディアは困る。

 私たちがこだわったドキュメンタリーを後輩たちにもつくってもらいたい。制作者には立派な精神と確固とした信念を持ってほしい。スクープ性があって、誰もやっていない描き方をした番組をいつまでも見たい。そう思います。=おわり(この連載は防長本社・山瀬隆弘が担当しました)

(2010年12月23日朝刊掲載)

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