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連載・特集

県都・松江市の選択 ’13松江市ダブル選 原発マネー

歴史館赤字 使途に疑問

 任期満了に伴う松江市長選・市議選が14日告示、21日投開票される。ダブル選を前にした県都・松江の課題のうち、原発マネーについて探った。

 「お城の見える博物館」をテーマに市が2011年3月、松江城東側に開いた松江歴史館(同市殿町)。松江開府400年祭の中心事業として整備した。近世松江の歴史資料などを展示するが、利用の低迷で赤字が続く。

 有料入館者は11年度約9万6千人と目標の25万人に遠く及ばず、12年度は約4万6千人と半減した。赤字額は2年で1億5千万円を超える見通し。総事業費39億円の大半は中国電力島根原子力発電所(同市鹿島町)の電源立地地域対策交付金だが、赤字は一般財源で穴埋めされる。

「避難道を先に」

 同館は今春、元広告代理店社員を新たに採用。企画展も充実し入館増を目指す。だが採算ラインは年間22万6千人と厳しい。仁井誠事務局長は「歴史資料の保存も館の大きな目的。市民全体で負担すべきだ」と言う。

 だが市民の目は厳しい。同市古志原、無職阿部晃雄さん(67)は「原発マネーで原発のある鹿島町からの避難道を先に造るべきだった。歴史館は交付金で建てても運営は血税」と市の交付金の使い方に疑問を示す。

 市によると、合併した05年度から11年度まで、市に入った電源立地地域対策交付金など電源3法交付金は約365億3600万円。市は交付金を消防署、幼稚園などの人件費にも充て一般会計の歳出を抑制。11年度は交付金31億3800万円のうち約7億円を人件費に使った。臨時財政対策債を除く市債残高は6年間で221億円減った。

値上げ続く国保

 交付金を人件費に充てることで市債の償還は進む一方、市民への還元では不満の声も出ている。国民健康保険料は値上げが続く。10年度が前年比10%、12年度同10・25%、13年度も同5・2%上げる予定だ。加入者1人当たりの国保料は09年度の年7万3800円が、13年度は同9万4150円となる。

 市市民部の三島康夫部長は「できれば値上げはしたくないが国保加入者は市民の2割。特定の人への税投入は理解が得られない」として、赤字補填(ほてん)は難しいとの認識を示す。

 しかし国保加入者には収入増を見込めない高齢者も多い。松江市八雲町で飲食店を営む男性(67)は「店は赤字で年金だけが頼り。私も妻も持病があり、国保料を無理して支払っているが、これ以上の値上げは厳しい。知人3人は支払えなくなった」と打ち明けた。(土井誠一)

(2013年4月12日朝刊掲載)

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