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NPT再検討会議準備委 共同声明 日本賛同せず 

 スイス・ジュネーブで開催中の2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第2回準備委員会で、南アフリカが24日、「核兵器の人道的影響に関する共同声明」を発表した。「いかなる状況下でも核兵器が再び使用されないことが人類生存の利益になる」と訴える。74カ国が賛同したが、米国が提供する「核の傘」への影響を懸念する日本は加わらなかった。(ジュネーブ発 田中美千子)

 共同声明は、広島、長崎への原爆投下や核実験によって、甚大な被害がもたらされたと強調。「核兵器が再び使われないことを保証する唯一の手段は核廃絶」としている。

 日本は昨年秋の国連総会で「核兵器を非合法化する努力」を促した共同声明への賛同を求められたが、安全保障政策に合致しないとして拒んだ。

 南アフリカやスイスは今回、唯一の被爆国である日本の賛同を取り付けようと「非合法化」の文言を削除。準備委の開幕前にはスイスが日本に共同声明への賛同を求めたが、日本側が回答を留保したため直前まで交渉を続けた。日本の対応が国内外から非難を招くのは必至だ。

 日本政府内には「核の傘」への影響や軍事的挑発を続ける北朝鮮への抑止力低下につながりかねないとして、一部に反対論があったとされる。「いかなる状況下でも」との表現を削除するよう求めたが、賛同国が増えていく中でスイスなどは応じられないとした。

 一方、米国の核抑止力に依存する北大西洋条約機構(NATO)加盟国のノルウェーやデンマークなどは賛同した。

 当初、共同声明は23日に発表予定だったが、議事進行が大幅に遅れ、持ち越された。

【解説】非核外交 内実問われる

 被爆国日本は、核兵器の使用を否定する共同声明にサインしなかった。起草した南アフリカや賛同した国々は、さぞや落胆しただろう。そしてまた、この報に触れた広島、長崎の被爆者は憤っているはずだ。「核の傘」を提供する米国を刺激したくない―。この考えを日本政府は最後まで崩さなかった。

 共同声明は、日本をはじめ核抑止力に頼る国が加わりやすいよう、核の「非合法化」の表現を削除。南アフリカは「被爆国の賛同こそ重要」(外務省担当者)とぎりぎりまで待った。日本はしかし、さらなる文言変更を求め折り合わなかった。

 核兵器廃絶を掲げる一方、核抑止力に頼る安全保障政策を貫く日本。その矛盾と、過剰なまでの対米配慮が露呈し、国内外の批判と失望を集めた格好だ。核兵器の非人道性に焦点を当てた声明は、被爆地の訴えに重なる。岸田文雄外相は衆院広島1区選出。「非核外交」の内実が問われても仕方あるまい。(田中美千子)

(2013年4月25日朝刊掲載)

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