×

連載・特集

核不使用 賛同せず 被爆者ら抗議デモ 広島市長、遺憾の意

 2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第2回準備委員会で、日本政府が「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に賛同しなかったことに、国内外から批判と失望が集まっている。準備委に参加した広島市の松井一実市長は遺憾の意を表明。被爆者や核兵器廃絶を求める非政府組織(NGO)メンバーはスイス・ジュネーブの日本政府代表部に向けて抗議のデモ行進をした。(ジュネーブ発 田中美千子)

 松井市長と田上富久長崎市長は準備委会場の国連欧州本部で、ジュネーブ軍縮会議政府代表部の天野万利大使と面会。「一部修正を求めて交渉したが時間切れとなった」と説明を受けた。面会後、松井市長は「声明は被爆地の願いに重なり、言い回しも問題ない。不可解な結果で納得できない」と不満を示し、田上市長も「日本は被爆国としての姿勢が問われることになってしまった」と残念がった。

 抗議デモには準備委の関連会合出席でジュネーブに来ていた20カ国の約70人が参加。国連欧州本部を出発し、「ノーモアヒバクシャ」などと叫びながら日本政府代表部まで約30分かけて行進した。広島の被爆者、佐久間邦彦さん(68)=広島市西区=は「ヒロシマの願いは裏切られた」と声を張り上げた。

 南アフリカが発表した共同声明は「いかなる状況下でも核兵器が再び使用されないことが人類生存に寄与する」と訴える。74カ国が賛同する中、日本は「いかなる状況下でも」の文言を削るよう求め、賛同国に加わらなかった。

 南アフリカやスイスは日本の賛同を取り付けようと、声明に「核兵器の非合法化」の文言を入れず説得を続けた。日本政府は北朝鮮が核・ミサイル開発を続ける中で米国の提供する「核の傘」への影響を考慮し、賛同しなかったとみられる。

(2013年4月26日朝刊掲載)

年別アーカイブ