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フクシマとヒロシマ3年 <中> 甲状腺検査 「安心」求め やまぬ受診

 「がんじゃなかったですよ。おめでとう」―。2月上旬、広島市南区のクリニック。武市宣雄医師は福島市から訪れた少女や家族に甲状腺の超音波診断(エコー)の画面を見せ、優しく語り掛けた。少女は笑みを浮かべ、母親と抱き合った。

 事故当時18歳以下だった全員を対象とした福島県の健康管理調査で、少女が2012年に受けた判定は「A2」。4段階で2番目に軽く、「小さなしこりか嚢胞(のうほう)(液体の入った袋)はあるが2次検査は必要ない」と記された紙が郵送で届いた。

 親子は2年後の次回検査を待てず、福島市内の病院で再検査を求めたが「県の検査を受けたなら必要ない」と断られた。詳しい説明を受けられず、エコー画像の入手も情報公開請求が必要。不信感ばかり募る。

 福島第1原発事故の直後、母親は家族5人の食料を確保するため、スーパーの「お一人様1点限り」の行列に娘も一緒に並ばせた。「あのとき、放射能を吸わせてしまったかも」と自らを責め続ける。

 被災地の子の甲状腺検査を無料で続けている武市医師を知り13年8月、初めて受診した。それから半年。「同席して説明を受け、画像も見せてもらい安心できる」と母親。今後も広島に通うつもりだ。

 武市医師の下で、福島県から1月末までに155人が受診。震災3年を控えたいまでも初診者が来る。高陽第一診療所(広島市安佐北区)にも約10人が定期的に訪れている。

 福島県の調査で甲状腺がんが確定したのは、約25万4千人のうち33人(2月上旬時点)。原発事故の影響かどうかはまだ分かっていない。

 因果関係の解明も含め、被爆医療の蓄積があるヒロシマへの期待は大きい。ただ、高線量を一瞬に「被爆」する原爆と、低線量を長期間「被曝(ひばく)」する原発事故では、健康管理のノウハウなどが異なる。

 広島大原爆放射線医科学研究所(原医研、広島市南区)とベラルーシの研究所は2月中旬、連携協定を結んだ。チェルノブイリ原発事故後、低線量被曝による甲状腺がんが多発した同国。正確な汚染地図の作成、リスクが高い人たちへの高頻度の健康調査などで再発率を低く抑えた同国の経験に学ぶ点は多い。

 健康管理調査の検討委員を務める原医研の稲葉俊哉所長は「ヒロシマには、フクシマに技術を提供する重い任務がある。ベラルーシの知見を吸収し、役立てたい」。(馬場洋太)

(2014年3月7日朝刊掲載)

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