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連載・特集

緑地帯 「アトム書房」を歩く 山下陽光 <1>

 長崎から18歳で上京し、東京で18年間暮らし、昨年、長崎に帰ってきた。肩書は強いて言えばアーティストだが、普段は「途中でやめる」という少し変わった名前の洋服を作っている。

 東日本大震災に遭い、福島第1原発事故の放射能におびえながら、このヤローというテンションだけは忘れずに、「原発やめろ!!!!!デモ」というアクションを都内でやりまくった。ネット上で「アトム書房」の画像に出会ったのは、まさにその頃だった。

 広島の原爆ドームの前にあったアトム書房。今なら漫画「鉄腕アトム」が思い浮かぶが、その連載より何年も前、戦後すぐの焼け野原にこの古書店はできた。

 衝撃的だった。福島の原発の前に「原発ふざけんなショップ」はできていない。けれど、被爆翌年の原爆ドーム前にアトム書房は建ったのだ。そのスピード感、店名の不謹慎な響きがたまらなかった。調査のために広島を歩きまくり、いろんな人に話を聞いた。

 現在、福山市鞆町、鞆の津ミュージアムで「山下陽光のアトム書房調査とミョウガの空き箱がiPhoneケースになる展覧会」を開いている。

 スーパーなどで、ラップがけをしてミョウガを売っている黒色のトレー。驚いたことに、それにスマートフォンの「iPhone4」が、あつらえたかのようにピッタリと収まるのだ。そんな突拍子もない発見をしていく感覚で、アトム書房について紹介したい。(やました・ひかる アーティスト=長崎県諫早市)

(2014年3月4日朝刊掲載)

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